大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)152号 判決

一、本願考案の構成要件について

成立に争いのない甲第二号証(本願実用新案公報)によると、本願新案登録請求の範囲には「軟質P・V・Cから成る内層4とが堅剛性スプリングコイル3を包蔵して同スプリングコイル3のピツチ間隔の空所で相互一体に合着されている耐圧ホース」とあり、組合せる物品としては軟質P・V・C(塩化ビニールの重合体)からなる内層1と外層2、そして堅剛性スプリングコイル3の三要素からなり、その組合せとしては、スプリングコイル3のピツチ間隔の空所で相互一体に合着されているだけの構成した示されていない。そして実用新案はもともと物品の形状,構造または組合せに限られるものであつて製造方法はふくまないから、「相互一体に合着」とは相互一体に接着している組合せないし構造を示すにすぎず、その接着する部分は「ピツチ間隔の空所で」と限定するだけであるしスプリングコイル3の存在を考慮に入れると、ピツチ間に空隙を残して内外層の一部分(ピツチ間の大部分にわたるではあろうが)が接着される場合とスプリングコイル3を埋めつくしてピツチ間に空隙がなく内外層の全面にわたつて接着される場合の双方の態様をふくむものといわねばならない。ましてや「相互一体に合着」が必然的に空隙を残さずに内外層全面にわたつて接着せざるを得ないような高温熔融などの技術手段を示すものとは実用新案の性質上考えられない。したがつて、本願考案の詳細な説明にみられる「融着」「融着状態」「骨肉一体の状態」などの文言が、内外層間に空隙なく接着されることを意味するものということはできない。また本願考案においては内外層の接着のために酢酸ビニールなどの接着材料を介在させることは実用新案登録請求の範囲には記載されておらず、その構成要件にふくまれないことについて争いのないところである。それ故、酢酸ビニール接着材として使用した実施例により、その接着作用・融着状態からおして、たまたま空隙なく接着した耐圧ホースの構成をみたとしても、それは接着材料・熔融方法など本願考案の要旨外の技術手段を附加して、前記のようなピツチ間隔の空所における接着の二つの態様のうちの一つをみたしたに過ぎず、これから本願考案の構成要件の有無を論ずることはできない。そのほか考案の詳細な説明欄を子細に検討してみても、考案の目的・作用効果からみて空隙なく接着していることを必然の前提としなければならないような指摘はない。 そうするとピツチ間隔の空隙の有無は本願考案の構成要件にふくまれるものとはいえず、審決が構成要件の認定を誤つたという原告の主張は理由がない。

二、引用例の認定と本願考案との対比について

軟質P・V・Cから成る内層と外層とが堅剛性スプリングコイルを包蔵している耐圧ホースにおいてスプリングコイルのピツチ間隔に空隙のあるものが公知であつたことについては争いがない。そして成立に争いのない甲第三号証(昭和三五年実用第二三三八二号登録異議申立事件における証人神田和一、同金山武の証言調書)によると、昭和三二年後半頃、理研ビニル工業株式会社がその頃までに吸収した山城製作所の仕事を引き継いで製作し販売して公知であつたものと認められる引用例の耐圧ホースは、踏んでも潰れないような外圧に対する変形防止と内圧の変化に耐えるものとして水道用・化学工業関係などに使用され、塩化ビニールの内層と外層とからなり、その間に耐圧の目的のため螺旋管ないしコイルを巻いて内外層を一八〇度位の温度で熱して接着させたものであるが、そのピツチ間隔に空隙が残されているものであるか、空隙なく合着されていたかどうかは明かでなかつたことが認められる。

ところで本願考案は前項認定とおりピツチ間隔の空隙の有無はその構成要件にふくまれていないものであるから、引用例の耐圧ホースは、物品として塩化ビニールからなる内層、外層、堅剛性のスプリングコイルの三要素、そして包蔵するコイルのピツチ間隔の空所で内外層が一体に接着されている組合せという本願考案の構成要件のすべてを具備していることになる。したがつて本願考案を引用例と同一と認定した審決に誤りはない。

三、結論

そうすると、本件審決には原告の主張するような判断の誤りはないから、本訴請求は失当として棄却する。

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